動画は1月29日頃、SNSに投稿された。ボックス席に座った金髪の少年、周囲を警戒した様子でキョロキョロなら、手にしていた備え付けの醤油ボトルを舐める。撮影者は「えっ、●っ」と呟く、止める素振りはみられない。

　金髪の少年は指を口の中に入れ、レーン上の寿司になすりつけようとするものの、寿司回ってず、「来い早く。来うへんなぁ」と苛立った様子を見せる。すると、レーン上に積み上げられた湯呑みを手に取り、ベロベロと飲み口を舐め回し、再び元の位置に戻した。

　ようやく寿司回ってくると、幾度となく指先をペロペロと舐め、レーン上の寿司に何度もなすりつけた。48秒の動画は、カメラ目線の少年キメ顔でグッドポーズをする姿で終えられている。

　の動画投稿されると、SNSでは「スローペロペロ事件」などと話題を呼び、またたく間に拡散された。流出元になった動画は2月2日時点で3800万回以上再生されている。さらに、ネット上では金髪の少年の個人情報拡散され、氏名だけでなく高校生であると、バイト先、中学校の卒業アルバムの写真まで流されている。なかには動画の撮影者の少年の父親だという情報も飛び交った。

　スローを運営する「あきんどスロー」は1月30日に当該店舗のすべての湯呑みの洗浄、しょうゆボトルの入れ替えを実施したとを公表。2月1日に迷惑行為を行なった当事者と保護者から謝罪を受けたとを公表した、被害届を提出し、「引き続き、刑事と民事の両面から厳正に対処する」としている。スローの株価は１月31日だけで145円下落し、時価総額は170億円近く下った。スローのみならず、回転寿司という業態そのものへの消費者の安心感とイメージを悪化させる重大な事態となった。

　記者は、岐阜県内にある当事者の自宅を訪れた。最寄りの駅から車で40分ほどの山間にある一軒家だ。呼び鈴を押すと、父親対応した。

──スローの一件で、事実関係を確認したいと思っております。
「それは……言えないんですよ」

──謝罪に行かれたのは事実でしょうか？
「そうですね。すみません」

──お父さん動画を撮影されたという話ネット上では出ています。
「それは（とんでもないという顔をして）ないです」

──あれはお友達撮影したものなんでしょうか。
「（うなずきなら）そまでも言っていいものなのか……詳しいとは本当に何も言えないんですよ…。僕も弁護士さんの方にお願いしてありますので、何も話さないようにと言われておりますので」

　父親は記者の目をしっかり見なら話し、実直な性格であると窺える。息子本人の話になると、目に涙を溜める。

──本人はどういう様子なんでしょうか。言える範囲で結構ですので。
「もうすく……反省しているというか…」

──落ち込んでいるという様子ですか。
「（うなずく）」

──突然自宅に伺ってしまい、大変お騒せいたしました。
「（涙目で被っていた帽子を取り、深々と頭を下げて）本当に申し訳ざいませんでした」

　外食チェーンでは客による迷惑行為の動画SNSで拡散されるトラル相次いでいる。「はま寿司」でも1月上旬、レーンを流れる他人の寿司に男性わさびを付ける動画拡散され、運営会社の「ゼンョーホールディングス」は被害届を提出した。

　さらに北九州市を中心に60店舗を展開する人気うどんチェーン「資さんうどん」でも、備え付けの共用のスプーンを手にした男性卓上に置かれた天かすをそのまま口に運動画拡散された。の男性も天かすをと食べ、口いっぱいに押し込むと、カメラに向けて親指を突き立てていた。

　本人にとっては悪ふざけのつもりかもしれない、相次ぐ“テロ動画”は食の安全・安心や外食産業の業績にまで関わる問題になっている。
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